大腿骨頸部骨折は高齢者に多く見られる疾患の一つです。
骨折の部位や程度によって治療方法が異なるため、理解しておくことが大切。
術後は痛みや活動の制限などにより離床が進まないことも多く、離床を進めるための関わりも重要になります。
コンテンツ
大腿骨頚部骨折とは?
大腿骨頸部骨折とは、大腿骨の近位部と骨頭下から小転子付近までの部分の骨折をさします。
大腿骨頸部骨折は骨折部位によって病名が変わります。
大腿骨頚部骨折の分類
大腿骨頸部骨折は、次の3つに分類できます。
- 頸部骨折(内側骨折)
- 転子部骨折(外側骨折)
- 転子下骨折
高齢者に多い疾患
大腿骨頸部骨折は65歳以上の高齢者に多く見られ、骨粗鬆症などにより骨がもろくなっていることが原因として挙げられます。
骨粗鬆症により骨が脆い状態では、軽く尻もちをついた程度でも骨折してしまいます。
大腿骨頚部骨折の治療方法
大腿骨頸部骨折の治療方法としては、症状に合わせて次の2つが選択されます。
- 保存的治療
- 手術療法
骨折部位の転位がなければ1ヶ月、転位があれば2ヶ月ほどの期間がかかり入院が長いことも特徴です。
手術療法は骨折の部位や骨折パターンによって手術法が選択されます。
大腿骨頸部骨折の手術の種類
大腿骨頸部骨折で行われる手術の種類は以下の通りです。
- ハンソンピン(内側骨折)
- 人工骨頭置換術(内側骨折)
- CHS(転子部骨折)
- 転子下骨折(ガンマーネイル)
大腿骨頸部骨折の病態関連図
ここでは、大腿骨頸部骨折の病態関連図について見ていきましょう。
骨折したらどうなる?
骨折を起こすと骨組織の損傷や骨膜神経の刺激など、様々な症状が見られます。
骨組織損傷により機能障害を起こし歩行不能、変形により外旋位などが起こることが考えられます。
また、筋肉や皮下組織、血管の損傷により出血を起こし貧血、そして出血性ショックの危険性や循環障害などが起こります。
細胞の障害により発熱やCRPが上昇し、炎症反応なども見られるようになります。
大腿骨頸部骨折の合併症は?
大腿骨頸部骨折の合併症としては、次の6つの要因が考えられます。
- 皮膚損傷による感染の危険性
- 神経損傷による知覚・運動麻痺
- 血管損傷による出血性ショック
- 脂肪塞栓による肺塞栓症・脳塞栓
- 挫滅症候群による腎機能低下
- 骨折による内臓損傷の危険性
手術療法によって起こりうることは?
大腿骨頸部骨折で手術療法が選択された場合は、術後のリスクも考える必要があります。
人工骨頭置換術が行われた場合は、人工骨頭の感染や緩み、術操作による靭帯の損傷、そして脱臼の危険性があります。
大腿骨頸部骨折のアセスメントの考え方
大腿骨頸部骨折は受傷後の合併症の早期発見が大切になります。
合併症の早期発見
合併症としては、脂肪塞栓や血栓症、腓骨神経麻痺などが挙げられます。
脂肪塞栓は受傷後12〜48時間で発症が見られることが多いため、受傷直後だけでなく継続して観察を続けることが必要です。
- 発熱
- 頻脈
- 呼吸困難
- 低酸素血症
- 急激なHbの低下
- 下腿外側面からの足背の痺れ
- 痛み
- 知覚鈍麻
- 足関節の背屈
疼痛により安楽が障害される
骨折により疼痛が生じるため睡眠などが十分に摂れないことがあります。
高齢者の中には痛みを訴えない方もいるので、客観的な視点からの観察も必要になります。
- 疼痛の部位や程度
- 睡眠状況
- 食事摂取量
- 鎮痛薬の内服と効果
- 鎮痛薬による副作用の有無
手術への不安
手術療法を行う場合は、手術の準備や説明が必要になります。
突然の怪我と入院、そして手術と状況について行けず、不安を表出できない人も少なくありません。
- 手術説明の内容の理解の程度
- 説明中の表情や言動
- 家族の意見や話
術後合併症の有無と経過観察
手術療法を行った後は、術後合併症の観察が必要になります。
術後合併症については下記の記事でまとめています。


転倒転落の危険性
離床時は骨折による治療の影響などにより、今までとは異なる環境になります。
移動時や歩行時は介助や見守りでの対応が必要になるため、安全な移動方法を獲得できるようにサポートを行っていきます。
- 病室の環境
- 移動機能
- 移動の援助の必要性と理解
- 患部の症状
同一体位による褥瘡のおそれ
牽引やスピードトラックによる保存的治療の場合は、長期間の床上安静が必要です。
同一体位を取ることにより、褥瘡が発生する危険性が高くなります。
- 仙骨部や踵部の骨突出部位の発赤などの有無
- 栄養状態
- 食事摂取状況
- 排泄方法
大腿骨頸部骨折の看護実習のポイント
大腿骨頸部骨折の実習では、合併症の早期発見と離床への関わりがポイントになります。
術後は疼痛なども強く、思うように離床が進まないことも多いです。
早期離床を進めるためにも心理的な側面も十分にアセスメントを行い、サポートしていくことが求められます。
看護実習のアセスメントを理解するために
大腿骨頸部骨折は高齢者に多く見られる疾患であり、実習でも受け持つ機会が多いです。
骨折部位によって治療方法や治療期間が異なるため、病態について理解しておくことが求められます。
高齢者の患者さんは骨折によって退院後の生活環境にも変化が生じるので、退院を見据えた看護計画の立案と関わりが重要です。
看護実習のアセスメントの勉強にオススメ
アセスメントを行うためには、解剖生理や病態に関する知識も必要になります。
実習になると、勉強した疾患の理解や解剖生理がアセスメントに繋がらないと悩む学生も。
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