排便時や浣腸を行う際に「血圧低下を起こす」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
血圧低下を起こすことは理解したけどメカニズムはよく分からないという人も多いと思います。
排便時などに血圧が下がってしまう原因として、実は迷走神経が関係しています。
迷走神経と排便時の血圧低下のメカニズムを知っておくことで、実習の時に役に立ちますよ!
便は蠕動運動によって運ばれる
排便は人間にとって大切な機能の一つであり、毎日何気なくトイレに行っているという人も多いですよね。
人間の排便は、吸収された残りカスや腸内細菌、上皮細胞や不要になった鉄分やマグネシウムなどが含まれています。
これらの成分は腸の中を移動しながら便の塊となっていきますが、すぐに排泄されるわけではなくS状結腸でストップします。
そして、食事による刺激で蠕動運動が起こり、便の塊はS状結腸から直腸へ運ばれます。
直腸に運ばれた便が排泄されずに我慢できるのは、肛門括約筋が働いているからです。
肛門括約筋には2種類存在しており、反射的に弛緩する内肛門括約筋と意志により緊張させることができる外肛門括約筋が正常に働いているので便意を我慢することができるのです。
便の刺激によって便意が起こる
蠕動運動によって腸の中を通っていった便は、直腸内圧が40〜50mmHg以上になると、直腸壁の骨盤神経から仙髄の排便中枢に伝わり、視床下部を通り大脳皮質に伝達されることで、便意を意識するようになります。
直腸壁の刺激は排便中枢に伝わりますが、この時に副交感神経を刺激して反射的に直腸筋が収縮して内肛門括約筋を弛緩させて便を排出しようとします。
この時に便が排出されないのは、先ほどの項目にもあったように、外肛門括約筋を意図的に収縮させることができるためです。
このように、便が直腸内に溜まり直腸壁を刺激することで、排便中枢へ伝達されるのです。
血圧低下は迷走神経反射によるもの
排便時などの直腸壁を刺激することによって起こる血圧低下は、迷走神経反射が原因です。
迷走神経反射とは、過剰に反応してしまうことによって様々な症状をきたすものです。
主な症状としては、緊張状態により失神やふらつきを起こしたり、血圧低下が見られたりします。
迷走神経は延髄下部から出て、頚部や胸腔内の臓器の一部を支配している副交感神経です。
排便時には直腸壁が便で刺激され、排便中枢の伝達によって、内肛門括約筋を弛緩させるために副交感神経が優位に働きます。
副交感神経は血圧を低下させたり、胃腸の運動を亢進させたりする機能がありますよね。
直腸の刺激によって副交感神経が優位になり、迷走神経反射が起こることがあるのです。
排便のケアは注意
このような理由から、摘便や浣腸、座薬の挿入などの処置を行う時は、排便や薬剤により直腸を刺激するので、迷走神経反射による血圧低下に注意しなければならないのです。
ケアの時以外にも、以下の場面で注意が必要です。
- トイレ内での失神
- トイレ動作時のふらつきや気分不良
ADLが自立しており介助が必要ない患者さんの場合であっても、迷走神経反射による症状を起こす可能性があるので、気分が悪くなったらすぐにナースコールを押すようになどの声かけをしておきましょう。
排泄ケアで気をつけるために
排泄ケアは患者さんにとって必要なケアの一つですが、迷走神経反射を起こしてしまう危険性もあるので注意して行うことが大切です。
迷走神経反射によって転倒や転落などの二次被害も考えられるため、事前に予防することが必要です。
排泄ケアを勉強したい人にオススメの参考書
参考書によっては排泄ケアが詳しく載っていないということもありますよね。
この本では、可愛いイラストと一緒に排泄ケアの基本、手技までが載っています。