周手術期の看護では、術後の合併症に対する観察がポイントになります。
その中でも、循環器合併症である出血は特に注意が必要です。
術後出血が起こってしまうと予後の経過にも関わり、患者さんの命につながることもあるため早期発見がポイントになります。
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術後の循環器合併症は4つ
術後に起こりうる循環器合併症は、以下の4つになります。
- 不整脈
- ショック
- 術後出血
- 心源性ショック
これらが循環器合併症として考えられますが、看護計画を立てるときは優先順位を考えて立てて行きます。
循環器合併症の優先順位
術後に見られる循環器合併症として頻度が高いものは、不整脈、術後出血です。
優先順位としては以下の通りになります。
- 不整脈(術直後〜)
- 術後出血(術直後〜48時間以内)
- 心原性ショック(術後3日以内)
この中でも最も重要な合併症は、術後出血なので、実習では術後出血を挙げることが多いです。
不整脈とはリズム障害のこと
不整脈は、心拍数が正常なリズムを刻めず、リズムが崩れてしまった状態です。
不整脈は、低酸素血症やアシドーシス、脱水、電解質バランス異常などが原因で引き起こされます。
術後に最も多い不整脈は、頻脈であり、頻脈から心室性頻拍に移行すると悪化し、心室細動を起こすと心停止が見られます。
不整脈の原因
手術や麻酔の影響により、電解質異常などが起こると心臓の興奮を上手く伝えることができなくなってしまいます。
不整脈の症状
不整脈の症状と経過は以下の通りです。
頻脈から重症不整脈である心室性頻拍に移行すると、次の症状が見られます。
- 胸部圧迫感
- 呼吸促進
- 冷汗
- 悪心、嘔吐
術後出血とは手術が原因で起こる出血
術後出血は、手術中の止血が不十分な場合や吻合部分からの出血のことです。
術後出血の原因
術後出血が起こる原因としては、手術中に止血した部位から再び出血してしまうことや臓器の吻合部分から出血することが挙げられます。
術後出血が続くと循環血液減少性ショックへ移行し、正常な細胞活動を維持できなくなってしまいます。
術後出血の症状
術後出血と出血性ショックの症状は以下の通りです。
循環血液量15〜30%の出血でショック症状が見られます。
- ドレーンの排液が鮮紅色(動脈性の出血の場合)
- ドレーンの排液が暗赤色(静脈性の出血の場合)
- 血圧低下
- 脈拍微弱
- 冷汗
- 顔面蒼白
- 頻呼吸
- 乏尿
心原性ショックの原因は心筋梗塞が多い
心原性ショックは、心収縮力や心拍数の低下が原因で発症することが多いです。
病棟で最も頻度が高い原因は、心筋梗塞であり、術後3日以内に起こることが多いです。
心原性ショックの症状
心原性ショックの症状は以下の通りです。
- 胸痛
- 不整脈
- 血圧低下
循環器合併症が見られたら?
術後に心電図モニター上で危険な不整脈や虚血性心疾患などの兆候が見られたら、患者の症状や様子、心電図の記録を取るとともに医師に報告します。
ドクターの指示に対応するため、抗不整脈や除細動器などの準備を行います。
ショック体位をとる
術後出血による循環血液量減少性ショックの場合は、ショック体位(膝を伸ばしたまま下肢を30〜45°挙上する姿勢)をとり、ドクターの指示に従います。
指示では、輸液や輸血、酸素吸入、循環維持薬の準備などを行います。
循環器合併症は早期発見がポイント
術後出血によりショックを起こす前に、循環器合併症の早期発見が大切になります。
術後は、容態が急変しやすいためモニターを装着して管理を行います。
特に、不整脈や心疾患の既往がある患者と高齢者の場合は、術後3日間はモニタリングを続けることが多いです。
術後の循環器合併症の看護目標
術後の循環器合併症の看護目標としては、合併症の予防と早期発見がポイントになります。
看護目標の一例を見てみましょう。
- 循環器合併症の兆候が見られず、退院できる
- 術直後から術後12時間以内血圧低下、ショック症状が見られない
- 術後48時間以内に術後出血の兆候が見られない
- 術後3日以内に心原性ショックの兆候が見られない
既往歴に心疾患がある患者さんの場合は、看護目標も変わってきます。
患者さんの個別性を踏まえて目標を立てることが大切になります。
術後の循環器合併症の看護計画
看護計画の一例を見ていきましょう。
O-P(観察項目)
①現在の状況についてのアセスメント
- 意識レベル
- 血圧
- 脈拍
- 術中の出血量
- ドレーンの出血量
- ドレーン排液の性状と量
- 創部の出血の有無
- INOUT(尿量、輸液量、輸血量)
②ショック症状についてのアセスメント
- チアノーゼの有無
- 冷汗、冷汗の有無
- 不整脈
- 血圧低下
- 胸痛の訴え
- 顔面蒼白
- 乏尿
T-P(援助項目)
①頻回にバイタルサイン測定を行う
- 帰室直後の2時間は30分間隔で行う
- 3時間以降も頻回に訪室し、観察を行う
- ドレーン排液、尿量の計測を行う
②安楽な体位で安静を保持する
- 安楽クッションなどを使用して安楽な体位を保持する
- 急激な体動は避け、複数で体位変換を行う
③疼痛コントロールを図る
- 疼痛出現時の薬物による疼痛コントロールを図る
E-P(患者教育項目)
- 疼痛がある場合は我慢せず看護師に伝えるよう指導を行う。
- 気分不良などの自覚症状があればすぐにナースコールで知らせるよう説明を行う。
看護計画のポイント
術後出血は特に注意するべき合併症の一つであり、発見が遅れてしまうと重症化してしまいます。
術後出血を早期発見するためには、創部の出血やドレーンからの出血を観察することが大切です。
また、術後は麻酔による影響や疼痛により、自分で訴えることができないことも多いので、頻回に観察を行い患者さんのわずかな変化に気がつくことが必要になります。
術後の循環器合併症を理解するために
術後は患者さんの容態も安定せず、急に変わってしまうことも多いです。
術後出血は、創部やドレーンからの情報がポイントになるので、しっかり観察を行うことが大切になります。
異常の早期発見を行うためには、観察の視点に根拠をもつことが求められます。
周手術期の勉強にオススメ
周手術期の実習では、普段の実習よりボリュームも多く大変に感じている人も多いと思います。
特に、術後の観察は重要なポイントになるので、実習の指導のメインになります。
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