摘便は便を指で掻き出す処置ですが、いくつか注意をしなければならないポイントがあります。
直腸に貯留している便を指で掻き出す時に、直腸の神経を刺激してしまうため、血圧低下を引き起こすことがあります。
また、摘便は患者さんにとって苦痛を与えてしまうケアの一つです。
摘便が血圧低下を引き起こす理由を知っておくことで、実習でスムーズにケアを進めることが出来ますよ!
コンテンツ
摘便の目的
- 直腸下部に停滞した硬便を除去し、排泄を促すため
摘便が必要になる理由
- 下剤の内服や浣腸を行なっても排便が見られない場合
- 創傷や衰弱、高齢などによりいきむことができない場合
- 二分脊椎などの脊髄損傷により直腸神経麻痺がある場合
摘便を行う際の留意点
- 下半身を露出するのでプライバシーの保護に努める
- 疼痛を生じることがあるので声かけを十分に行う
- 実施中は処置に集中せず患者の反応を観察する
摘便のアセスメントと観察項目
下剤の内服状況
病棟で使用される主な下剤の商品名は以下の通りです。
- 酸化マグネシウム
- マグラックス
- プルゼニド
- マグコロール
視診、触診による腹部膨満感の程度
腸蠕動音の聴診や腹部レントゲンの初見
既往歴
直腸腫瘍や痔核の有無を確認します。
直腸腫瘍などがある患者さんへの摘便は出血の原因となるので禁忌です。
止血、凝固系の血液検査の結果
摘便を行うと痔核などがあると出血する場合があります。
また、止血、凝固系の数値が基準値より低値だった場合は、出血が止まらないこともあるので確認しておくことが大切です。
摘便の必要物品
- ゴム手袋(2枚重ねて使用するため多めに準備しましょう)
- 潤滑油(ワセリン、オリーブ油、グリセリンなど)
- トイレットペーパー
- 潤滑油を入れるシャーレ
- ビニール袋
- 処置用シーツ
- 紙おむつや便器
- 陰部洗浄用の物品一式
- エプロン
摘便の手順
1.患者に摘便の必要性を説明し、同意を得る。
2.カーテンなどを閉めてプライバシーの保護に努める。
3.患者を左側臥位をとってもらい、物品を準備する。
4.下着を脱いでもらい、不要な露出を避けるためにバスタオルをかけて保護する。
5.臀部の下に処置用シーツを敷き、その上にオムツや便器を置く。
6.ディスポーザブルエプロンと手袋を2枚重ねて着用し、潤滑剤を人差し指または中指にたっぷりつける。
7.患者に口で呼吸をしてもらい、いきまないよう声かけを行う。
8.潤滑剤のついた指で肛門周囲をゆっくりなぞり、円を描くようにマッサージをしてから脊椎に沿わせる方向へと、ゆっくり肛門に挿入する。
9.指を静かに回しながら、肛門筋や粘膜周囲に痔核などが触れないかどうかを触診する。痛みを訴えた場合は無理に実施せず摘便を行う。
10.便塊に触れたら指を伸展させてその便塊をほぐすようにして、直腸壁の周りから便を剥がすような感覚で指を巡らせる。
11.指先に触れる便塊を少しずつ指で肛門側に移動させ、肛門輪を保護しながらゆっくり体外へ掻き出す。時間がかかっても直腸内の指は静かに動かし、粘膜損傷に留意する。
12.最初の便を出した後に自然排便が見られることがあるため、様子を見ながら摘便を行う。手袋は適宜取り替えて行う。
13.患者が自分でいきめる場合は、いきむように促して状況を見る。
14.直腸内の指が便塊に触れなくなったら、肛門部分を軽く押して肛門が開いた状態にならないようにする。
15.摘便が終了したら、重ねてある手袋を1枚外して、肛門周囲を洗浄し清潔にする。
16.清潔にできたら患者の体位や衣類、かけものなどを元の状態に整える。

摘便注意に出血した時の対処法
高齢者の摘便の場合は、出血が見られることもあります。
疼痛の程度やバイタルサインを測定し、出血が止まらないなどの症状が見られる場合は医師に報告します。
摘便のアドバイス
摘便は患者さんにとって苦痛を伴う処置の一つでもあります。
安楽に安全に処置を行うためには、患者さんの反応を観察することがポイントになります。
失敗した例
- 便を探すことに集中しすぎて患者さんの反応がしっかり見れていなかった。
- 全身の力を抜いてもらえなくて肛門に指が入れにくかった。
- 痛みの訴えがなかったので大丈夫なのかと思っていたら我慢していた。
摘便の処置の際は、施術者が患者さんの背後に立って行うため反応が見えにくいことがあります。
また、肛門部の力が上手く抜けていないと、指を入れにくいだけでなく疼痛の原因となってしまいます。
実習で摘便のケアを見学した時は…
実習で摘便のケアを見学しましたが、指を入れて掻き出す時に患者さんの表情が苦しそうだったので、深呼吸を促しながら行なっていました。
続けて実施するのではなく、休憩を挟みつつ患者さんのペースに合わせて実施していました。
摘便で排出される便は硬いものも多く、日頃から水分摂取や下剤の内服などを積極的にケアに取り入れていました。
まとめ
摘便は便が直腸付近に貯留して自分で出せない時に行われるケアの一つです。
肛門に指を入れて掻き出すため、疼痛や苦痛を生じることもあるので、実施中は必ず表情や疼痛の訴えなどの観察を行うことが大切です。
特に高齢者の場合は、活動量が低下して便秘になりやすく、便も固くなりがちなので日頃から便秘に気をつけることも必要です。
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