全身清拭は、全身の皮膚の清潔を保つために必要な看護ケアの一つです。
入院している患者さんは、自分で清潔な状態を保つことができないことでストレスを感じている人も多いです。
ベッド上で行う全身清拭は看護師も患者さんも負担が大きいですが、手早く正しい手順で行うことがポイントになります。
実習で実施する時は、お湯の温度と拭く順番に気をつけることでスムーズに実施できますよ!
コンテンツ
全身清拭の目的
- 全身の皮膚・粘膜の表面に付着している垢や汚れ、汗を取り除いて清潔にするとともに、感染を予防する。
全身清拭が必要になる理由
- 安静臥床を必要とし、入浴・シャワー浴ができない場合
全身清拭を行う際の留意点
- プライバシーの保護に努める
- お湯の扱いに気をつける
- ウォッシュクロスが冷めないように注意する
全身清拭のアセスメントと観察項目
全身状態
バイタルサイン、呼吸状態、
症状
安静度
どの程度動けるのか
手術または創部の状態
創部からの出血の有無、ドレーンの有無
治療・処置による制約
皮膚の状態
発汗や皮脂の汚れの有無
排泄物・分泌物による汚染
バルーン挿入の有無など
全身清拭の必要物品
- バスタオル2枚
- ウォッシュクロス2枚
- フェイスタオル2枚
- ベースン2個(石けん用とすすぎ用)
- ピッチャー2個(1つは調整用の水を入れておく)
- バケツ2個(湯と汚水用)
- 石けん
- 湯温計
- 防水シーツ
- 新しい寝衣
- (陰部洗浄用物品)
- 陰部洗浄用ボトル
- ガーゼ
- 手袋
- エプロン
- 便器(必要に応じて)
全身清拭の手順
全身清拭+陰部洗浄を行う場合
1.患者に全身清拭の説明を行い同意を得る。
2.必要があれば実施前にバイタルサインを測定する。
3.物品を揃え、湯は50〜55度のものを準備しておき、ピッチャーに温度調整用の水を入れておく。
4.病室のカーテンなどを閉めてプライバシーの保護に努める。
5.洗面器に湯を入れてウォッシュクロスをゆすいで絞る。ウォッシュクロスの温度は40度前後にする。
6.患者に綿毛布をかけ、綿毛布の下で脱衣する。
ウォッシュクロスの扱い
7.清拭する部位をバスタオルで覆い、絞ったウォッシュクロスに石けんを泡立てて皮膚を拭く。
8.ウォッシュクロスの石けんを落とすときは、石けん用のベースンでゆすぎ、すすぎ用のベースンで絞ったウォッシュクロスで2〜3回清拭を行い、石けん成分を落とす。
9.ベースン内の湯は汚れ具合、冷め具合を確認して適宜取り替える。
清拭の実施
10.フェイスタオルを首元にかけておき、目→額→頬→鼻→口→顎→耳→首の順番で拭いていく。
11.拭き終わったら乾いたフェイスタオルで水分を拭き取る。
上肢
12.左上肢から始め、手指→前腕→上腕→肩→腋窩の順番で拭く。
13.肘関節や上腕を支持しながら拭くとともに上肢の可動域も観察する。
前胸部と腹部
14.バスタオルを横に広げて胸部を覆うようにし、バスタオルを上げて前胸部を清拭する。
15.乳房の形に沿って拭き、側腹部と腹部を拭く。
下肢
16.ウォッシュクロスをすすぎ、綿毛布は肩まで全身を覆い、バスタオルを縦に広げて下肢全体を包む。
17.左下肢から始め、足→下腿→大腿の順番で拭いていく。
18.膝関節や下腿を支持しながら下肢の可動性を観察しながら拭く。
背中・臀部
19.患者に看護師の方を背になるように側臥位になってもらい、体の下にバスタオルを挟み込み露出と濡れを防ぐ。
20.湯につけて絞っておいたフェイスタオルを2枚に折ってから背中に当てて、バスタオルをかける。
21.背部→肩→腰部→脇→臀部の順番に拭いていく。
22.肛門周囲はゴム手袋を着用して、ガーゼに石けんを泡立てたもので拭き、ペーパータオルやガーゼで拭き取る。
23.側臥位の状態で着替えの寝衣の袖を通し、背中に広げて仰臥位なってもらい袖を通す。
24.乾いたバスタオルを胸部にかけ、タオルケットは膝の位置まで下げておく。
陰部洗浄
25.膝を立てて、両下肢を少し開いてもらい、臀部の下に防水シーツを敷き込む。
26.オムツをしている場合は尿取りバッド内で、パンツを着用している場合は尿器を差し込む。
27.エプロンと手袋を着用して、鼠蹊部にガーゼやタオルを当てておき、陰部洗浄用のボトルで陰部に湯をかける。
28.湯で濡らしたガーゼに石けんを泡立てて恥骨部から鼠蹊部、肛門部にかけて広範囲に洗浄する。
29.女性の場合:恥骨部、鼠蹊部を洗い、大陰唇を十分に開いて洗う。尿道口→小陰唇→膣→肛門部の順番で前から後ろへ一方通行で洗っていく。
29.男性の場合:亀頭部、包皮の内側、陰茎、陰嚢も洗う。
30.湯で十分に洗い流し乾いたガーゼなどで水分を拭き取る。
31.尿器の場合は取り外し、尿パッドの場合は使用したものを取り替えて廃棄する。
32.手袋を外し、衣服を整え、必要があればバイタルサインを測定する。
全身清拭のアドバイス
全身清拭は、清潔を保持するためには必要なケアになりますが、時間もかかるため患者さんの疲労度も大きくなります。
ウォッシュクロスは冷めやすいので、温度と冷感に注意しながらケアを行うことが大切になります。
失敗した例
- 清拭に時間がかかってしまいウォッシュクロスが冷たくなってしまっていた。
- 時間がかかってしまったので患者さんを疲れさせてしまった。
- 室温の調整ができておらず冷感を与えてしまった。
全身清拭では、全身の衣服を脱いで行うため、冷感を感じさせないように保温を行うことが大切です。
まとめ
全身清拭は、安静臥床が必要な患者さんや入浴ができない場合に行われるケアです。
特に術後などは感染を予防するために、清潔ケアを行うことが重要になります。
患者さんの体調に合わせて適切なケアを行うことが大切です。
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